これは禅の修行に用いる公案の一つです。
唐の時代の禅僧に俱胝和尚という方がおられました。この方は人に何を聞かれても指を一本立てるだけであったといいます。
そして亡くなられる(遷化と申します)時に、「私は師匠から教えていただいた指一本の禅をいままでずっと使い続けてきたが一生でも使いきれないものであった」と弟子に申されたのです。
どういうことでしょうか?
ピントこないようでしたら、親指を一本立てて、それを目を凝らしながら気合を入れてみてください。力まず、声も出さず、心の中で指を見ながら、ウンと気合を込めるのです。その後に主人公と言っても良いと思います。
それをむしゃくしゃした時にやってみてください。
どこらともなく、「おい、しっかりしろ、なにふらふらしとるんか」という声が聞こえてくると思います。と同時に気分がガラッと変わると思います。
この親指立ての禅はもっと困難な状況に立ち向かっていくだけの気力をもたらしてくれます。
願わくは一生用いられんことを。