「江湖風月集」という禅宗で大事にしてきました漢詩集があります。
そこに「密室」と題しまして石林行鞏禪師の詩があります。
密室
只箇方方一丈中
漫天網子百千重
放一線開通汝氣
黄梅夜半送盧公
密室
只だ箇の方方一丈の中(うち)
漫天の網子、百千重。
一線を放ち開き、汝の氣を通ず
黄梅、夜半、盧公を送る
これは入室参禅の様を述べたものです。細かい解釈は述べませんが、その主旨は「厳しい鉗鎚だがそれと同時に幾重もの修行者を導く手立てをもって、修行が成ることを望んでいる」というものです。
師家の胸の内はこのようなものだと思います。
ここに出てくる一線というのは「一線道」ということで、「たった一本しかない糸のように頼りない道」ということです。自分が困り果てた時に突如現れる、もうそれにしか頼れない突破口ということです。人はなんといっても自分が窮した時に純粋になれるものです。
入室参禅で師家はそこに修行者を追い込むのです。